デザイナーは、デザインだけでなく自分でスモール ビジネス をやってみた方がいいと思う

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草加市在住のグラフィックデザイナーの岡田俊樹さんは、草加の隣の吉川市の出身です。学生の頃から継続している音楽活動をしながら、デザイン会社に就職し、デザインの道を進んできました。デザイナーとして独立し、現在は、川越の特産品作りに携わったり、自ら立ち上げた野菜作りの活動など、デザインだけにとどまらない活動をおこなっています。「デザイナーは自分でスモール ビジネス をやってみた方がいい」と言う岡田さんに、今、デザイナーとして思うことや、これからのことなど、たくさんのお話を聞くことができました。


自由な校風の高校では、面白い人がたくさんいた

自由な校風に惹かれて入学した埼玉県立越谷高校は、スクールカーストみたいなものがない高校でした

自分のようなバンドをやっていたような人も、地味な感じの人も、ギャル男みたいな人も、スポーツマンも、みんな仲が良かったですし、先輩とも上下関係のようなものはなく、対等な関係でした。
なので、今でも付き合いのある先輩もいますし、今の奥さんも高校の時の一つ上の先輩です。

一応、進学校だったのですが、校則も緩く、制服も「標準服」として存在していましたが、着ても着なくても自由でしたし、室内履きもスリッパでした。今は、変わってしまっているようですけどね。

競争心のない人が多かったのか、美術大学や、服飾系や写真の専門学校などを、進学先として選ぶ人が多かったですね。

 

始めはデザインよりも音楽をやりたいと思っていた

高校卒業後、専門学校で国家資格も取ったのですが、当時、音楽活動で少しずつギャラを貰えるようになっていました。音楽活動に没頭していたかったので、その時はフリーターをしながら音楽活動を続けていました。

デモを作っては海外のレーベルに送ることを繰り返しているうちに、あるイベントのオーガナイザーから「すごく良いからうちのイベントに出てくれないか?」と声がかかりました。それで、そのクラブイベントに、レギュラーDJとして参加した時に気づいたことが、

 

自分以外のDJはみんなちゃんとした職を持っていたんです。みんな会社員で。

 

「会社員でも音楽続けられるんだ」と思って、就職することにしました。当時、音楽を作っていたパソコンで、自分のWEBサイトやデモのジャケットを、自分で作っていたので、デザインの仕事ができるのではないか?と思い、未経験可というようなデザイン事務所に就職しました。でも、その頃は、デザインの仕事はそれなりに楽しかったのですが「本当にやりたいのは音楽なんだけどな」と思っていました。

 

音楽活動では、インディーレーベルでアルバムも1枚出したのと、コンピレーション・アルバムに参加したり、NHKのビデオライブラリーに楽曲を提供、スケートボードの映像に楽曲提供したりしていました。

 

デザインの仕事は、最初に働いていた事務所から何度か転職しました。手応えを感じたのは、ある会社で小売のデザイン全般を担当していた時、自分が「こうしたらいいでしょ?」ということを全てやってみたら、WEBの申し込みや購入が前年比240%と、すごく伸びたことがあったんです。

 

それは、自分で事業をやってみた方がいいと思うきっかけになったかもしれないですね。ちょうど結婚するタイミングでフリーランスとして独立しました。

 

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映像作家の杉本篤とのプロジェクト「HULAHOOPERS」の事例

 

デザインだけに注力してもそれは本当のクリエイティブではない

独立して始めの頃は、特に仕事の方向性を絞るようなことは考えていませんでしたが、徐々に、WEBデザインよりも、紙など実際に手に取ることができるようなグラフィックデザインをメインでやっていきたいと思うようになりました。パソコンの画面上だけで完結するものではないことをやっていきたいと。

 

現在、自分たちで野菜を作って販売する事業もおこなっています。吉川市にある実家が農家をしていて、土地が空いているということもあり、高校の時の先輩と一緒に野菜を作り、そのパッケージデザインをするなどして、販路の開拓をしています。

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農業関連で関わるプロジェクト事例

 

パッケージデザインって最初に商品を手に取るキッカケでしかない。実際に物を売ろうとする時、デザインは1つの要素でしかなくて、商品自体の良さはもちろん、営業力や販売力、PRなど複数の要素が噛み合ってはじめて成り立つものだと思います。なので、デザインだけに注力してもそれは本当のクリエイティブではないんじゃないかなと。

今は、ちゃんと「自分がつくったもの」って言えることをやってみたいと思っています。

 

デザイナーは、自分でスモール ビジネス をやってみた方がいいと思う。

WEBでもパッケージでも、予算の制限がある中でデザイナーはデザインをするのですが、デザインに対して意識が高ければ高い人ほど、いつの間にかクリエイティブ至上主義になってしまうことってよくあると思います。
クリエイティブ至上主義にとらわれると、予算が低い案件の場合「お金がかけられないからアレができない」「ここの表現はあきらめよう」ってデザインのゴールが、商品やサービスが成果を出すことより「美しいデザインをすること」に意識がいってしまう。

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川越での新しい特産品作りのプロジェクト事例

 

でも、実際に自分がスモール ビジネス をしていれば、「この商品を500円で売るためには、どのようなパッケージになるか?」を考えるとき、商品とパッケージにかけられるコストって決まってくるので、その限られたコストの中でベストを尽くそうという考え方をリアルに実感できるんです。自分のお金と時間を費やしますから。

さらに言えば、納得のいくクオリティのものが出来たとしても、お店の陳列場所が想定外だった場合「単品では良いものに見えていたはずなのに、相対的にみたら映えないパッケージだった」みたいな経験をリアルにすることで、デザインで何が本当に求められているのかを実感できると思うんです。

 

まあ、それも自分に対しての戒めでもあるんですけどね。デザイン以外のこともやっていないと、歳を重ねるにつれ、だんだん目が肥えてくるかもしれないけれど、それだと「ただの目の肥えたおじさん」になっちゃうんじゃないかって(笑)

 

カルチャーの誕生を嗅ぎ分けられる人でありたい

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今後というか、今までもずっと思っているんですけど、ムーブメントを作るきっかけを生み出せるような人になりたいと思っています。

 

例えば「ブルーボトルコーヒー」って、もともと個人で作ったカルチャーやムーブメントだったものが、現地で流行り、日本でも流行って、M&Aでネスレに買収され、今は世界中で展開しているんです。

 

最初は個人から生み出されたカルチャーを、それを「嗅ぎ分けられる人たち」が見つけ、話題になってきた段階で、大企業がそれに乗っかり「マーケティング」と呼ばれる手法によって広められていく。そうして、初めの段階で「嗅ぎ分けられなかった人たち」にも、そのカルチャーを届けているような現象があるんじゃないかと思うんです。

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他、音楽などに関わる事例

 

自分は、常に「嗅ぎ分けられる人」の側でありたいなと思っています。ムーブメントの根源を生み出すことは難しいかもしれないけれど、カルチャーの誕生を嗅ぎ分けられる人であり続けるよう、いつまでも感覚を研ぎ澄ませていたいですね。

 

岡田さんのサブスク配信中の楽曲

 


岡田さんの、クリエイティブに対する考えを深く聞くことができました。一つ一つ自分なりに成果を残しそこに留まらず次の段階に進もうとする姿勢や、今の世情を読み取りそれをアウトプットしていこうとしている姿勢を感じました。岡田さんの考えが、クリエイティブに関わる人たちに何か響くことがあったらなと思っています。

 

この記事の撮影

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カメラマン

吉田記子