みんなの得意を生かし合う場所を作りたい

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「みんなの保健室 陽だまり」代表の服部満生子さんは、長年看護師として病院に勤務していました。民間病院に勤務中、服部さん自らが企画した「健康生活支援室」の活動をきっかけに、地域でも気軽に健康相談ができるコミュニティがあれば、医療に限らず色々な問題を解決できるのではないかと感じたと言います。草加を拠点にコミュニティ作りを6年間継続している服部さんに、活動に至るまでの経緯、活動を通じて感じたこと、これからの課題など、たくさんのお話を聞くことができました。

引っ越しをきっかけに草加へ

草加に引っ越してきたのは、ちょうど子育てが大変な時でした。
子育てに専念するため公立病院での仕事を一時的に辞めていたのですが、今振り返ってみると育児ノイローゼのような状態だったんだと思います。「子供が可愛い」というよりも「子供のせいで自分がどんどん社会から置いていかれている」そんな感じがしていました。
 
よっぽど酷かったんだと思います。家族が「(宮城県から)私の両親を呼んで、子供の面倒をみてもらっている間、仕事に出ていればいい」と言ってくれたんです。
 
その期間はパートとして草加市立病院で働かせてもらっていました。当時の看護師仲間とはその後も関係は続いていて、今の活動を始める時に声をかけました。「一緒にやりませんか?」と誘ったら快く引き受けてくれたんです。

 

民間病院で働きはじめて

すぐに実行できるのが面白くて

ずっと公立の施設や大学で働いていましたが、たまたま仕事を辞めていたタイミングに、知人を通して民間の病院を紹介していただきました。始めは乗り気ではなかったんです。それまで公立の病院に勤務していたせいか、心のどこかで「民間の病院なんて」という意識があったんだと思います。

でも働いてみたらすごく面白くて(笑)

公立病院の場合、何か新しいことを始めるためには、企画書を作り予算を申請する。そこから実際に予算が下りるまでは3〜4年かかってしまうこともあるんです。でも、その民間病院では企画を提案するとすぐに実行できました。自分の企画したものさえ良ければ、すぐにできるというのがすごく面白くて夢中になっていました。その代わり短期間で結果を求められましが、運もよかったのか結果はついてきたんです。

その時提案したものの一つが、いまの活動「みんなの保健室 陽だまり」の前身なんですよ。
 
 

誰でも居ていい場所をつくる

それまで病院内の図書室だった場所を「健康生活支援室」として、患者さんが自分の健康状態を相談をするための場所としても活用できるようにしました。患者さんだけでなく、看護師も医師もボランティアも「誰でも」出入りできる場所を作ろうと思ったんです。

医師からは「そんな場所ではなくて診察室を作れば良いのに」と言われたりしていたのですが、実際のところ、患者さんは、気軽に医師には相談できていないように見えました。医師には言えないから、ナースステーションにしょっちゅう来ているような患者さんも多かったですし。だから「診察」する部屋とは別に「相談」できる部屋をきちんと設けたら、患者さんの居場所もでき、看護師さんの負担も減るんじゃないかと思ったんです。

結果的には患者さんにも看護師さんにも喜ばれました。また、それによって評価にも繋がっていきました。
 
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あんたじゃないと言われて

たまたま、その「健康生活支援室」に居た時間帯に、ある患者さんがやってきて、私を見るなり「あんたじゃない」って言い出したんです。

聞くと、その人は糖尿病の患者さんでした。日頃「食べちゃいけない。運動しなきゃいけない。」と医師から言われ続け、そのことは「理解はしている。」と。「でも俺にはそれができないし、守れない。」だから看護師である私にそのことを話しても、どうせ医師と同じことしか言わないに決まっているから、自分のように「できない、守れない患者と話がしたい。」と言うんです。
それで、同じように守れなくて繰り返し入院しているような患者さんに行ってもらったら、すごく話が弾むんですよ(笑)
「あ、これだな」と感じて、次第に「健康生活支援室」のような活動を地域に帰ってやってみたいと思うようになっていきました。

働き始めて7年経った67歳の時に、辞めることを伝えました。病院からは色々と好条件を出していただき引き止められましたが、なぜかその時は辞める意志が固かったんです。自分の年齢を考慮した時、後どれくらい元気で活動できるのかと考えると「今だ」と思いました。
 

これから活動を始めようとしていた時に

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自分が患者の立場になってみて

市へ助成金の申請や、仲間集め、と活動に向けた準備を進めていたのですが、仕事を辞めた4〜5ヶ月後に乳がんが見つかりました。

でも助成金が出ることは決まっていたし、活動を中断することは全く考えていませんでした。
なので「活動の合間に治療をする」と宣言し、先生はそれを受け入れてくれました。

その方針に至るまでは安易な道のりではなかったんですけどね。
実際、自分が患者の立場になってみると、辛くて治療から逃げたくなったり、治療を辞めたくなったり、そんなことばかり思っていました。
「もう治療やめます」と先生に宣言した時もありました。すると先生は、じっくり話を聞いてくれた後、笑いながら「看護師なら、今、治療を辞めたら、今までのことが全て無駄になるって理解してますよね?」と。さらに「働いていた時、同じようなことを患者さんに言っていませんでしたか?」って言うんですよ。

なんだか、笑えてきちゃって。

かつて「健康生活支援室」で「あんたじゃない」と言っていた患者さんと同じようなことを言っていたのかもしれないなって。
その時、先生の言葉をすごく客観的に聞くことができたんです。そのことがあってから気が楽になりましたね。
 
 

お互い様ってなんだろう?

仕事人間で、朝から夜まで家を空けていたような私が、闘病中はずっと家にいました。それを近所の人たちは気づいてくれていたんです。
食べ物も食べられない状態だった時に「一食分どうぞ」と食べ物を持ってきてくれました。辛くて誰にも会いたくないからと窓を閉め切っていた時も「死んでないよね?」って訪ねてきてくれたりしてくれる。

もちろん「癌になった」なんて一言も言っていないにも関わらず、いい距離感で「関わって」きてくれていたんです。それにはすごく助けられました。

まだ病気になる前に「みんなの保健室 陽だまり」を机の上で企画していた頃、「お互い様のまちづくり」と言う言葉を、深く考えもせず掲げていたのですが、実際に自分が辛い立場になって、改めて「お互い様」の意味を考えてみると、「お互い様」って「お互いに関心を持つ」ってことなんじゃないかと思ったんです。

 

活動を続けて思うこと

みんなの得意を与えたり受け取ったりできる場に

活動を始めてから、準備期間も含めると約6年が経ちました。
初めは「コミュニティを通して医療相談ができる場所」として活動していましたが、実際に開催していく中で、集って楽しいだけで終わってはいけないと思うようになりました。

やっぱり、生きがいのようなものがないと、やる気が起きないし、続かないんじゃないかと。

参加者の皆さんそれぞれ得意分野があるので、得意なことを教えたり学んだりできる場を作り、それによって少しでも利益が出るようにしていきたいというのが、今後の目標です。
長生きできる人が増えてきた今の時代、その人たちが得意なことを生かす出番のような場所を作りたいんです。

それに、年齢関係なく生きづらいと感じている人もいるじゃないですか。
例えば、学校に行きたくないっていう学生さんに対しては、その人たちの立場や意見を聞いてあげるだけで、救われることもあるかもしれない。
子育てにつまずいている人がいたら、話を聞いてあげたり、1時間か2時間くらいならお子さんを預かってあげられるような場ができたら助かるのかもしれない。

カウンセラーでなくても、高齢者が話を聞いてもいいんじゃないかと思うんですよね。
 


活動取材記事はこちら

 
 

ビジネスとしての視点を持たなければ続かない

そんなアイデアを思いついても、一人ではできないし続かなければ意味がないんです。続けるためには「ビジネス」という考え方が必要になってくるのですが、私は、世代なのか看護師という職業柄なのか、その考えがすごく疎いんです。
さらに私の世代は、支払う側も、特に福祉や医療に関しては「やってもらって当たり前」との認識の人が多いんですよ。

その認識は変えていかないといけないですね。そうしないと高齢者と若い人たちとの認識の差が、どんどん開いていってしまうんじゃないかと感じます。

 

自分が楽しんでいれば人はついてくる

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この活動は、看護師6人からスタートして、現在はボランティアさんも入れると20人弱の人たちが、何かしらの形で関わってくれています。

人を動かすため、仲間を増やすためにしてきたことですか?

最初に目標は決めるけれど、動き出してからは、そこはそんなに重要視していないところがあります。ひとりでやっているわけではないので、周りの様子を伺いながらバランスをとっています。目標を達成することよりも続けていくこと方が大事だと思っているんです。

例えば、仕事だと目標設定ってすごく大事じゃないですか。公立の病院にいた時は、目標を設定して結果を出して、その報告書を出すというような年間スケジュールで動いていました。
でも民間病院にいた時は、自分と同じ意見の人を増やそうなんて考えたことはなかったんです。

なぜなら、やりたいことをやっていると結果がついてくるので。

自分が面白がってやっていると、みんなも面白がってくれる。反面「目標や目的を立ててそれに向かっていく」と言った途端、周りの人は、楽しくなくなって動かなくなってしまうように思うんです。

なので、自分の直感を大事にして、目の前に見えることをコツコツとやって、何よりも自分が面白がっていれば、きっと人はついてきます。そうやって私も仲間が増えてきたんですから。
 


活動拠点の一つである「コーヒーショップ ツネ」でお話を伺いました。終始、パワフルで明るい様子で、これまでのこと、これからのことをお話ししていただきました。取材前に想像していた「強い女性」というイメージは、ある意味そのままではあったけれど、「自分の弱さも見せることができる」ことも「強さ」なんだと、改めて感じました。
 
 

取材場所

コーヒーショップ ツネ 〒340-0052 埼玉県草加市金明町368−1

 

この記事の撮影

カメラマン

吉田記子