いろいろな人たちの日常が交わるカフェを、草加のわたしの思い出の場所で。

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 森寺彩乃さん トップ写真

草加駅東口からまっすぐ、路地の曲がり角に佇む素敵な雰囲気のoyatsu&coffee PAKAN。今回は店主の森寺さんに、PAKANへの想いや会社員時代との働き方・暮らし方の変化までたっぷりとお話をお伺いしました。


人見知りだったわたしが人好きになるまで

大学生の時から『自分で場を持っていろいろな人たちが集まる場所をつくりたい』という夢がありました。でも実はわたし、小さい頃から高校生くらいまでずっと人見知りの性格だったんです。

大学では英語学科に入学したのですが、学科内で敬語禁止というルールがあり、学生や先生もとてもオープンで風通しの良い環境でした。人見知りだった私は、やはり最初は心に踏み込まれるのが怖かったものの、一度自分もオープンになってみたらその気持ちよさを感じました。それにお互いに得るものが多いということにも気が付いたんです。大人になってから、人によって自分自身が変化したという経験をしたことで人間っておもしろいなと感じましたね。

それから、英会話カフェのコーディネーターのアルバイトの経験も影響しています。お客様はわたしとは歳の離れたサラリーマンの方々が多かったのですが、英語を習いに来ているからか大学生のわたしにも対等に接してくれて、年齢や立場が違う人同士でも良い距離感で関われることを知りました。その原体験があったからこそ、子どもたちはもちろん、大人もきっとうまく伝えられない想いやジレンマをそれぞれ抱えているかもしれない、でもここでならさらけ出して良いと思えるような場所を持ちたいと思うようになりました。

 

場づくりの夢を抱いて、まずは教育業界へ

新卒で入った会社は教育関係の仕事で、学習塾の教室運営をしていました。その会社を目指した理由は、いつか自分で場をつくるために若いうちからひとつの空間・場をマネジメントして、経営の実践ができるような仕事がしたかったからです。入社当時は夢に対して明確なビジョンがあったので5年後には会社を辞めるつもりでしたが、実際に働いてみると教育の仕事と自分自身の相性が想像以上に良くて仕事にのめり込みました。その分とても大変でしたが、やりがいが大きくて良い意味でこの仕事をやめられないかもとすら思いました。

ただ学習塾は、集うのは子どもだけで、その場にいる大人は講師か保護者という良くも悪くも限定された空間です。経験を重ねていく中で、良い意味でもっと緩くて、もっとたくさんの可能性が生まれる環境で人と関われたほうが楽しいとずっと感じていました。

それから、教育の仕事では子どもに対してやりたいことは何か、それを見つけようと教室長の立場から問いかけていかなければならないのですが、そもそも自分自身はどうだろうと自問自答したときに、私は大学生の頃にやりたかったことに近づけていないんじゃないかと思ったんです。そのタイミングで、自分の夢に近づくために会社を退職しました。

 

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 森寺彩乃さん oyatsu&coffee PAKAN 店内写真

食を通じた場づくりへの第一歩

教育の仕事を辞めてから、よりリアルにどんな場をつくるかということを考えたときに年齢や立場、国籍が関係なく人々がフラットに集まる場として『食』が共通テーマとしてあると考えるようになりました。ただ飲食経験がほとんどなかったので、勉強のために飲食業に転職。その中でもテーマを持って食に取り組んでいる会社に就職しました。その会社のおもしろいところは、社員が実際に島へ足を運び、島の人と直接コミュニケーションを取り、仕入れのルートをゼロから開拓、そして東京の店舗で料理を提供するというところでした。実は、PAKANで使用しているコーヒーは前職で出会った屋久島のロースターさんから仕入れているんです。

ついに草加でPAKANをオープン

 

PAKANの開業ストーリー

飲食業界の会社で働きながら、地元の草加市のSOSO CAFEでも働いていたときにオーナーの今井さんから”リノベーションスクール”(以下、リノスク)の存在を聞きました。(森寺さんにとって憧れの存在であるという今井さんの記事はこちら

SOSO CAFEで働き始めてから今井さんはずっと憧れの存在で、今も尊敬しています。そんな今井さんが紹介してくれたリノスクに、人脈を作れたらいいなというくらいの感じで参加を決めました。でも実際にリノスクで出会ったPAKANがあるこの物件の通りの近くには私の出身の小学校があって、小さい頃から何度も歩いた思い出の通りだったんです。この通りは人通りも多くなければ、一方通行で生活する人しか使わないような通りなのですが、私にとっては大好きな光景でした。まさかそんな思い出の場所にある物件に巡り合うとは思ってもいなかったので、運命を感じてカフェをオープンすることを決めました。

 

みんなの居心地の良い日常が流れる空間

カフェをオープンするにあたって、教育関係の前職での経験や想いから大人だけでなく子どもたちにとってもこの場が日常のひとつとなって、その日常が楽しくリラックスできるようになるといいなと思っていました。実際にPAKANをオープンしてから、子どもたちが集うようになり、輪が広がっていることを実感しています。この空間に子どもがいて、その子どもたちに勉強を教える大学生がいて、さらにお茶をしている大人がいて、というようにみんなの日常が自然と共存していることにしっくりきています。

 

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 森寺彩乃さん oyatsu&coffee PAKAN 店内写真

 

その中でわたしは、来てくださるお客さんとコミュニケーションをとることを大切にしています。そうすることで、私がお客さん同士をゆるく繋げることもできるようになるんですよね。私とお客さんはもちろん、お客さん同士のちょうど良い距離感や関係性を築けているような気がします。ついこの間も、別々に来店した大学生のお客さんがたまたま同じ時間に居合わせたときに私が一言3人に声をかけただけで友達のような関係性になってくれて。その日が初対面だったにもかかわらず3人で一緒に帰っていったんです。そんな風にPAKANを通じて繋がってくれたのは嬉しかったです。

心も身体もゆとりのある暮らし

仕事も暮らしも素のわたしで

若いときよりも暮らすということに興味が湧いています。大家さんが畑の野菜をお裾分けしてくれたり、畑を貸してくれたりする代わりに私も畑で使えるコーヒーのかすを渡したりと、素敵な関係性が築けているからか居心地の良い暮らしができている気がします。今は無茶をして仕事に打ち込むというよりも仕事も暮らしもどちらも大切にしたいです。

会社で働いていた時は帰宅時間も遅く、顧客や仲間の人生を背負う分、精神的なストレスを抱えながらハードな毎日を過ごしていました。その時は期待に応えるために頑張って仕事をしていたのですが、今振り返るとすごく無理をしていたし、背伸びをしていたなと感じます。ひたすらできないことと向き合う日々で、いろいろな感覚が麻痺していたなと。でも今は社会人になってから、一番素の状態で働けている気がします。

PAKANのこれから

これからもPAKANがお客さんにとって、心が穏やかになり、帰るときにはスッキリと気持ち良くなれる場所であり続けたいと思っています。あと思った以上にPAKANの空間が広く感じることがあるので、もしお互いにこだわりや想いに共感できる人がいたら、何か出店してくれたりする人がいたらいいなと思っています。

 


がむしゃらに働いていた社会人時代の経験を活かしながら、今は素直に自分と向き合い仕事も暮らしも楽しんでいる森寺さんの姿を想像することができました。明るくも飾らない、自然なやわらかさが印象的な森寺さん。今度は、森寺さんに会いにPAKANに行きたい。そう思えるほど素敵な魅力で溢れていていました。

 

インタビュー場所

oyatsu&coffee PAKAN 〒340-0016 埼玉県草加市中央2丁目2−20