草加で15年続くCafe conversion オーナーの今井さんに、これまでを振り返っての心境や、今後の目標を聞いてみました。

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今井慶子さん

間口の大きさからは想像できないほど奥行きのある長い店内。左右の窓から風が抜け、古い家具で囲まれた中、時間の流れがゆっくりと感じられます。

そんな草加の元祖リノベーションカフェであるCafe conversionを切り盛りしている今井慶子さんに、オープンから15年経った今、これまでを振り返っての心境や、今後の目標を聞いてみました。


Cafe conversionができるまで

30歳までに絶対カフェを開くと決めていた

20代前半は、もともと陶芸をやっていました。有名な作家先生のアシスタントをしていましたが、当時から陶芸だけで自立するのは難しそうだと思っていました。

とにかくセンスの良い先生で、ただ器を作るだけでなく、自らスタイリングして、見せ方を工夫することも大事だということを教えてくれました。陶芸以外の、ファッションや食に関しても「本物」を教えてくれたと思っています。

他のことも勉強した方が良いとアドバイスを受け、商業店舗デザインの専門学校に通うことにしました。当時は、昼は先生のアシスタント、夜は学校に通っていました。

そうやって勉強していくと、自分に向いていることと向いていないこと、やりたいこととやりたくないことが、だんだんわかってくるんですよね。自分の作った器で提供する飲食店をやりたいと漠然と思い始めたのが、24才の時です。

しかし、翌年の25才の時、先生が突然亡くなってしまったんです。その出来事が原因なのかどうか分かりませんが、それまで漠然とやりたいと思っていた飲食店への思いは、「30歳までに絶対にカフェを開く」と、決意に変わっていました。開業資金を貯めるため、お給料の良い内装業に就職します。その時はまだ専門学校に通っていたので、昼は仕事で夜は学校と、忙しい生活でしたね。

 

もともと草加でカフェを経営できるとは思っていなかった

29歳の頃から物件を探し始めます。住まいは草加でしたが、物件は都内で探していました。草加でカフェが経営できるとは思っていなかったんです。

けど、都内は家賃も高く、なかなか良い物件が見つかりませんでした。通勤の煩わしさもあり、草加でも物件を探してみたのですが、不動産に流通している物件は、なんとなくピンと来ないものばかりでした。

そこで歩いて探してみたら、この場所を見つけたんです。ギャラリーカフェにしたかったので、この広さは魅力的でしたし、市役所が近いのも決め手となりました。比較的、安い物件だったと思います。

当時で築60年。おそらくずいぶん前に入っていたテナントが作ったと思われる壁がたくさん残されている状態でした。それを次々と壊していき、最後の壁を壊し終わった時、この窓が出てきたんですよね。それで嬉しくなっちゃいましたね。

その視線の先の窓とは、木枠の窓で、昔ながらの模様のすりガラスがはめ込まれているものでした。

オープンしてから印象に残る出来事は

3年の壁 本当にやめなければいけないと思っていた

オープンして驚いたことは、仕入の業者さんがなかなか決まらなかったことです。当時は、気に入ったコーヒー豆の会社があっても、個人との契約は難しかった。自ら飛び込んで、商品の使い方やメニュー展開を説明しても、契約してもらえなかったんです。

その後、他の飲食店からの紹介がないと契約を結んでもらえないということが分かり、知り合いからのルートで紹介してもらい、なんとか契約することができました。

 

一番のピンチは、オープンしてから3年経ったあたりにお客さんがぱったりと来なくなったことです。世間では3年続かない飲食店は7割〜8割などと言われていたので「やはり3年か」と実感しましたね。支払いもギリギリで、本当にお金がなくて「やめようか」ではなく「やめなければ」と思っていました。そして、もう「いよいよ次はない」というところで、ちょうどテレビ取材のオファーがあったんです。

 

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Cafe conversion 店頭にて

 

15年の間に影響力のあるメディアが変わっていったのを感じる

放送したその日からすごい反響でした。

それからしばらくは、お店に行列ができ、店内は相席ばかりという状態が続きました。お客さんは、テレビで取り上げていただいた”ほっとけーき”と同じものを注文するので、”ほっとけーき”を練りすぎて腱鞘炎になったほどでした。

一度テレビで取り上げられると、他のテレビ局からも取材のオファーがきました。また、カフェ本やカフェ特集などの雑誌にも取り上げていただきましたね。

 

こうして振り返ると、時代の流れを感じますね。お店のPRの手段として、以前はテレビや雑誌だったのが、今ではTwitterやInstagramなどのSNSなんじゃないかと思います。同じWEBでも、ちょっと前はガラケーでブログをアップしていましたからね。

これからについて

ずっと変わらず「開いているお店」であること

15年やってきて感じるのは、お客さんの年齢の幅が広くなってきたということです。応援してくれるお年寄りの方や、変わらずにきてくれている年上の方もいれば、子育て層や、若いカップルも来てくれたりします。

いろいろな人との関わりもできて、お店を経営するのは楽しいですね。いわゆる金銭面だけで言ったら、雇われていた時の方がお給料も良かったし、休みもあったけれど、今の方がやりがいもあるし、やっていて楽しい。それに、今後どんなことがあったとしても、どうにかなるということが分かってきました。

ずっと続けていきたいですね。「いつ来ても開いているお店」であることが目標です。とはいえ、常に変化はしていきたいなと思っています。なので毎年お店の内装は、何かしら手を入れているんですよ。

 

今、お店に来ている若いお客さんたちが草加を離れ、ある時たまたま草加に来てこの店に入った時、「お店の様子は少し変わったけれど、あの時とメニューは一緒だね」というような、そんなお店になったらいいですね。

 


それぞれの時代を全力で駆け抜けてきた今井さん。お話しを聞きながら、店名の意味について考えていました。conversionには「改装」「変化」という意味がありますが、その店名に込めた意味を体現することにより、15年という長い年月を乗り越えられたのかもしれない。そして、これからも「変化」することにより、いつまでも「変わらない」お店を守り続けていくんだろうなと感じました。

 

インタビュー場所

カフェギャラリー コンバーション 〒340-0015 埼玉県草加市高砂1丁目10−3