ずっと過ごしてきた草加で、家族でキャンプをする楽しさを伝えたいと思って、お店を開きました

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 鈴木英隆さん キャンプ マーケット CAMP MARKET

草加にあるキャンプ専門店CAMP MARKETの店主 鈴木英隆さん

草加の外環自動車道近くの住宅街に、キャンプ用品専門店「キャンプマーケット(CAMP MARKET)」があります。明るい店内には、所狭しと商品が置かれて、お店にいながらキャンプのワクワク感を感じることができます。店主の鈴木さんに、草加にこのような専門店を開くに至った経緯や、キャンプに対する思いを聞いてみました。


キャンプと出会って、子供とキャンプに行くのが夢になった

サラリーマン時代に初めて行ったキャンプがすごく楽しかったんですよね。その時連れて行ってもらったのは、大人数でBBQをするようなキャンプだったのですが、もう「自分の趣味はこれだ!」と感じました。それから一人でもキャンプへ行くようになって、徐々にキャンプ用品を買い揃え、行く度に少しずつ増えていきました。当時は奥さんと付き合っていた頃で、結婚もしていなければ、子供もいなかったのですが、「将来、子供と一緒にキャンプをしたい」とずっと思っていました。それが当時の夢でしたね。

 

何事もなければサラリーマンを続けていたと思う

生まれも育ちも草加で、ずっと草加で過ごしています。大学卒業後は、三郷にある日産のディーラーで営業をしていました。営業の仕事は、毎月の成績がクリアになるので大変でしたね。もう胃がキリキリで。笑 でも、やりがいはあったし接客も嫌いではないので、何事もなければ多分、営業の仕事を続けていたと思います。

 

今、考えるとそれが転機だったのですが、日産に勤めてから3年経った頃、突然父が他界しました。入院して3日後のことで、本当に急だったので家族は大変でした。自分は妹と二人兄妹なんですけど、妹はもう家を出ていたので、突如、家で母と二人きりになりました。

父は、ずっと叔父さんが経営している幼稚園で働いていました。亡くなる直前まで仕事をしていたし、父の欠けた部分を補完する自然の流れの中で、幼稚園の仕事を始めることになりました。自分は保育士ではないので、幼稚園の運営に関わる総合的なことを担当していました。その頃は、幼稚園の子供達ともよく話していましたね。自分は前に出るタイプではないですが、人と話したりすることは嫌いではなかったので。

 

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 鈴木英隆さん キャンプ マーケット CAMP MARKET

好きなキャンプを仕事に

このお店の土地は、もともと、その幼稚園の運動場でした。運動場だったところに新しい幼稚園の施設を建設した際に、残った部分がこの土地です。当時は、更地になっていました。

このままだと駐車場になってしまうんじゃないか?と。そしてどうせ駐車場にしてしまうくらいなら、自分で何かやってみようかな?と思っちゃったんですよね。幼稚園で働き始めてから13年経った、37歳の時のことです。

どうせなら好きなことをやろうと。好きなことは仕事にできないという人もいますが、自分は好きなことじゃないと、おそらく来るであろう苦難を乗り越えられないんじゃないかな?って思ったんです。

キャンプは好きでずっと趣味として楽しんできました。その頃は、結婚もして子供も生まれていたので、サラリーマンの頃に思っていた「子供とキャンプに行く」という夢も叶えていました。

キャンプ用品店やアウトドアショップで働いた経験もない中、本当に0からのスタートでした。まず建物と商品を用意して、あとは知識を持っていれば始めることができるだろうと。何も分からないので、まずは問屋探しから始めて、最初は本当にバタバタでしたね。

色々なキャンプの形がありますが、うちは、どちらかと言ったら「家族でのキャンプ」を楽しんでもらうための道具を提供していきたいというコンセプトでやっていこうとスタートしました。

 

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 鈴木英隆さん キャンプ マーケット CAMP MARKET

本当に使える道具を売りたい

オープンしてから5年間で変わったこと

最初のうちは、問屋さんが薦めてくれたり、流行っている商品を置いていました。でもある時、それだと、今はいいかもしれないけれど、将来的にマイナスになるんじゃないかって思ったんです。お客さんが実際に使ってみて「これは、あまり使えないんじゃないか?」というのが、だんだん蓄積されていってしまうのではないかな?って。

それは実際に使ってみて気づいたんです。うちでは、1ヶ月に一度、実際にキャンプに行って色々な商品を試すようにしているのですが、その時にこの道具じゃなかったと感じたことがありました。

それからは、本当に使える道具だったら「これはいいですよ」って言えるけれど、そうじゃなければ、「いいですよ」とは言えない。って思ったんです。

 

そうしていくと、もしかしたら買わなければいけない物って、だんだん少なくなってきてしまうかもしれないんですよね。こんなお店を開いているのに矛盾した考えかもしれないのですが、でも「本当にこれはいいですよ」というものを軸にして、そこから派生する物を薦めていこうと思っているんです。

 

ここに来るお客さん同士が繋がる場を作りたい

お客さんには、なるべく一人一人に、どのようなキャンプをどのくらいの予算でやりたいのかを聞いて、それに合わせた商品を提案するようにしています。

必要なものを聞いて、うちのお店になかったら、ホームセンターで買うことを薦める時もあります。そのお客さんにとって、不要だったり、オーバースペックなのに、うちのものを無理に買ってもらうことはしていません。うちのような小さなお店では、そういったことを「ありがたい」と思ってくれるお客さんが居て、その人たちにリピートして来てもらえることが大事だなって思っているんですよね。

自分のキャンプ体験の話をしたい常連さんも多いんですよ。「こんなキャンプをした」「ここはまだ寒かった」など、タイムリーな情報を伝えてくれるので、それが自分にとっても知識になるし、そこで聞いた情報を違うお客さんにも伝えることができるので、ありがたいです。キャンパーは、自分の体験を話したい人が多いかもしれないですね。常連で来るお客さんも定着してきているので、いずれ、そんな人たち同士で交流や情報交換のできるような大きめのイベントをしたいなって、ずっと思っているんです。

 

ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー 鈴木英隆さん キャンプ マーケット CAMP MARKET

奥さんもお客さんと気さくにお話をされていました

家族や子供たちと過ごすのが全て

独立して、良くも悪くも自分次第だと思っています。やりがいはあるのですが、子供たちと過ごす時間は減ってしまいました。自分は4人の男の子の父親ですが、家族が全て子供たちと過ごしている時が豊かだと感じています。なのでそこはすごく残念ですね。でもその分、一緒に過ごせる時間が、本当に貴重なんだなって思います。

一緒にキャンプに行けるのは休みの合う日で、一年の中でも少ないのですが、子供たちは「いつ行くの?」と、結構楽しみにしてくれているんですよね。「あと◯日」ってカウントダウンまでして楽しみにしてくれているのを見ると嬉しいですね。

息子が後継になる可能性ですか?林業をやりたいと言っている次男が興味を持っていそうなので、考えちゃいますね。ただ、もし継いでもらうにしろ、どこかで一度働いてからと思っています。お客さんと接する上でも、社会人としての最低限の経験は必要なんじゃないかなって思いますね。

 

家族でいくキャンプで豊かな体験をしてほしい

家族みんなでキャンプを楽しむことって、本当にかけがえがないことなんですよ。

自分の親はキャンプに行く人ではなかったのですが、お客さんの中で、幼い頃、親にキャンプに連れていってもらっていた人たちは、自分が親になった今、子供とキャンプをしたいと言うんですよね。そして、子供の頃に行ったキャンプ体験のことを、みなさん覚えているって。

みんなでご飯を作り、自然の中で家族で集まって火を囲んで話をするってすごく豊かな時間だと思うんですよ。以前TVで見たのですが、火の揺らぎは、脳波に近いと言われているらしく、そのせいなのか、火を見ながらの会話って普段と内容が変わってくるんです。本質的な本音っぽいことが出てきたりするんですよ。

普段の生活だと、ご飯を食べ終わったらゲームしたりTVを見るというような感じになってしまいがちですが、キャンプに行ったら、自然を感じることしかないんですよね。草加や首都圏に住んでいると、なかなか普段の生活で、自然を感じることは難しいかもしれないけれど、一年に何回か家族で何もない中で過ごす時間があってもいいじゃないかと思うんです。

 


研究熱心な専門家でありながら気さくに話ができる鈴木さんの人柄が、お客さんたちを楽しませ、みなさんがまた来ようとリピーターになっているように感じました。取材を通じ、鈴木さんが売っているのはキャンプ用品ではあるけれども、本質的には、キャンプでの体験を通して、家族の大切さや、生きることの何かを感じてもらいたいのかもしれないと思いました。

 

 

インタビュー場所

キャンプマーケット(CAMP MARKET) 〒340-0003 埼玉県草加市稲荷4丁目22−7