草加に地域のリビングとなる場所を / さいかちどブンコ

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2022年6月、草加市八幡町にさいかちどブンコという図書館が開館しました。

この場所は、草加に地域のリビングとなる場所を作りたいと、シェアアトリエつなぐば(以下「つなぐば」)のメンバーが中心となって作られた私設図書館です。

シェアアトリエつなぐばがオープンしてから2022年6月で4周年。
このタイミングで、さいかちどブンコをオープンした理由や開館に至るまでの経緯を、プロジェクトメンバーの1人である、松村美乃里さんにお話をお伺いしました。

草加ローカルメディア・ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー さいかちどブンコ エントランス

地域につながる場所を作りたかった

さいかちどブンコとはどのような場所ですか?

地域に開かれた私設図書館です。
1階の閲覧スペースでは、一箱本棚オーナー(月額で、さいかちどブンコで自分だけの本棚を持つことが出来る仕組み)の皆さんが持ち寄った個性あふれる本を自由に読むことや借りることが出来ます。読書の時間を楽しめるよう、不定期で飲み物やスイーツ、雑貨を販売するお店がオープンしていることもあります。

また2階の一部は、デスク型のアトリエとなっていて、コワーキングスペースとして使用できます。

さいかちどブンコを開館することになったきっかけは何でしょうか?

6月でつなぐばがオープンしてからちょうど4周年を迎えました。
つなぐばは「仕事につながる」「母親とつながる」「地域につながる」という3つの「つながる」を軸に運営しています。その中で「仕事につながる」と「母親とつながる」という面では手応えを感じているのですが「地域につながる」という面では、難しさを感じていました。つなぐばでカフェを楽しむ方や、ワークスペースでワークショップをする方の属性を考えると、利用する方を限定してしまうかもと感じることもあって… 。

地域の人と、よりつながるため「皆さんが必要としているのはどんな場所だろう?」と考えていた時に、駅付近に気軽に立ち寄ることのできる本屋さんや図書館のような施設がないことに気づきました。
また、つなぐばのコワーキングスペースにはライター、カメラマン、デザイナーなどが在籍しているのですが、仕事や日常で本を必要としている人が多くいたんですよね。
そこから「本の貸し借りができ、人同士がつながる文化発信基地」のような場所が、地域の人にも、私たちにも必要な場所だなと気づき、その方向で進めることになりました。
 
ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー さいかちどブンコ 二階から

「つながる」から「つなげる」へ

クラウドファンディングのページに書いてある「つながるからつなげるへ」という言葉がとっても印象的でした。その理由はどういったところでしょうか。

つなぐばを立ち上げた時は、代表取締役の小嶋直さんも私も、この場所がもともと地元ではないこともあって、まずは自分達が地域と「つながる」という意識が強かったのだと思います。
4年間やってきた今、以前より私達と地域が近くなったように感じるので、これからは地域の中で「つなげる」立場に徐々に変わっていきたいと思うようになりました。

本って世代問わず人を「つなげる」ことができると思うんですよね。同じ趣味嗜好を持つ若者とおばあちゃんが仲良くなったり、子供と絵本で盛り上がったり。
この場所や本を通して色々な世代の方がつながってほしいなと思っています。

たしかに、本を通じて色々な世代の方がつながるきっかけになりそうですね。
この場所はとても親しみやすく多くの人に愛されそうな雰囲気があると感じるのですが、ここに決めた理由は何だったのでしょうか?

ここは、つなぐばを始める時に倉庫として利用していた場所で、もともと大家さんとは、いつかこの場所で何かしたいねという話はしていて。
方向性が決まってからは、まず大家さんやプロジェクトメンバーとさまざまな図書館や本屋さんを視察しました。
その中で、同じような規模の敷地で営業している本屋さんを見て「この場所でもできるのでは」というイメージが湧いてきました。また、ランドリーが併設されていることもポイントで。本を読みながら洗濯が終わるのを待つという光景も素敵だなって。
 
草加ローカルメディア・ローカルWEBメディア・地域サイト 草加ローカルストーリー さいかちどブンコ 受付

自分事として関わってもらうために

洗濯物を待ちながら本を読む。豊かな時間になりそうですね。

さいかちどブンコには「一箱本棚オーナー」「としょ係」など、さまざまな仕組みが採用されていますが、視察された図書館や本屋さんから参考にしたことなどはありますか?

仕組みを考える上で、ただ本がある場所というよりは、みんなのアイデアを実現できる場所にすることや、みんなが自分事として関わることのできる場所にすることを大切にしていて。
さまざまな図書館や本屋さんを視察させていただく中で「みんなの図書館さんかく」さんの仕組みが、私達の考えていることに近いと感じました。
参考にさせていただいた「一箱本棚オーナー」は月額2,200円で、自分だけの本棚を持つことが出来る仕組みです。置かれる本は多種多様で、みなさん自己表現の場として本棚を使ってくださっています。

「としょ係」は本の貸し出しの受付や清掃、つなぐばの商品の販売などをしていただく、いわゆるお店番です。担当者が決まっているわけではなく、無理なく持続していくために、やりたい人がいる時間帯だけ図書館を開けるという仕組みになっています。
また「としょ係」の方は、お店番をしている時間に、自分で作っている商品を自由に販売することができるのですが、これはさいかちどブンコ独自の仕組みなんです。

参考にしつつも、地域に合わせた独自の仕組みも取り入れてるのですね。

その他にもさいかちどブンコを制作している段階からも、自分事として関われる仕組みを取り入れていたと聞きます。具体的にはどういったことでしょうか?

クラウドファンディングで支援者を募ったり、本棚オーナーになる方に向けて本棚作りワークショップを行いました。
それと、メンバーや環境の変化のあるタイミングなど、さいかちどブンコで新しいルールを決める必要がある時は、みんなで話し合いの場を設けるようにしています。
関わりしろのある場所にすることで、自分事としてさいかちどブンコのことを考えてもらうきっかけになると思うので。
 
本を読む

地域とつながる

さまざまな工夫がなされているのですね。実際に営業を始めてみて、いかがですか?

基本的に「としょ係」の方がいないと開館しないシステムなので、どれくらい開館できるか不安でしたが、今はほぼ毎日開館しています。
「としょ係」のみなさんは、そこで何かを販売をしたいというよりも、自分の居場所としてお店番をしてくださる方が多い印象を受けています。(営業日時はInstagramでチェックすることが出来ます。)

居場所としても機能しているのですね。さいかちどブンコの利用者にはどのような方がいらっしゃいますか?

元々つなぐばにきてくれた方も多いですし、つなぐばに来たことがないという近隣住民の方もふらっと遊びに来てくれたりして、当初の目的だった「地域とつながる」場所になっていることを少しずつですが実感していますね。

それは嬉しいですね!最後に今後の展望を聞かせていただけますでしょうか?

まずは地域の人にとって、くつろげる第2のリビングのような場所になっていけたらと思います。そのためにSNSの告知だけでなく、近くでチラシを手配りしたり、イベントを開催しながら地道に利用してくださる方を増やしていきたいです。

これからも、時代によって柔軟に変化しつつ、末長く地域にとって愛され、次の世代に受け継がれるような場所にしていきたいなと思っています。
 
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インタビュー場所

さいかちどブンコ 〒340-0006 埼玉県草加市八幡町794

 

編集後記

「みんなの図書館さんかく」さんの「としょ係」の仕組みを採用した私設図書館は全国にすでにたくさんあります。
ですが、その中で開館初期から毎日のように開館できる図書館はそこまで多くはないそう。それは既につなぐばが地域に根付き、愛され、地域のコミュニティとして機能しているという結果ではないでしょうか。

今回、松村さんにお話を伺って、仲間や地域の人の声に丁寧に耳を傾け、さいかちどブンコを一緒に作り上げていこうとする姿勢がとても印象的でした。
その姿勢に、地域とつながるためにもっとも大切なことがあるように感じました。