クラフトビールの魅力は多様性だと思う。これからも色々な種類のビールを作り続けていきたい。
- 2020年10月26日
- 星野 幸一郎
草加市の隣、川口市で、個人でクラフトビールを製造・販売している星野幸一郎さん。住まいは川口市ですが、最寄り駅に草加駅を使っていたため、草加や、草加にあるお店には馴染みがあると言います。今回は、星野さんの作るビール「星野製作所(麦)」を取り扱っている草加のお店「ecoma coffee」や「野菜とお酒のバル スバル」の前で撮影し、クラフトビールの事業を始めることになった経緯や、これからのことをお聞きしました。
学生の頃も社会人になってからも、団体行動が好きではなかった
生まれは東京都墨田区で、高校生の頃に川口市に引越してきました。川口市と言っても自分の住んでいる場所は、川口駅からは遠いので、学生の頃から草加駅を使っていました。高校は御茶ノ水あたりにある学校に通っていたので、近くの楽器屋・CD屋・レコード屋など、音楽系のお店や、古本屋などに、よく行っていました。
その影響もあってか、音楽とか本は、昔から好きです。
学生の頃から、団体行動は好きではなかったですね。何をするにも決断が遅くなって停滞してしまいがちになるじゃないですか。それがすごく嫌いでした。決めたらすぐに、パッと行動したいなと。なので、少人数で意思決定ができるようなことが好きでしたし、今でもそうですね。
何か自分でモノを作って売ることをしたいと思った
大学を卒業して、サラリーマンの頃は、タオルの会社や香料の会社で営業をしていました。どちらの会社も、自社で、ものづくりをしている会社だったのですが、自分も何かモノを作って、自分で販売するようなことをしたいなと思っていました。
はじめからクラフトビールにしようと思っていた訳ではないんです。
少量ロットで出来て、ある程度の付加価値を作っていけるようなものは何かな?とずっと探していました。色々と検討している中で、ビールというものが、比較的小さな生産量で免許が降りるということを知り、興味を持つようになりました。
クラフトビールに興味を持ってから
まず、実際に小規模でビールを作っている店舗に行ってみました。飲んでみて、小規模で作るビールというものがどんな味になるのかを確認してみたり、どのような規模で作っているのか話を聞いたりしました。
何店舗かのお店で話を聞いてみて「まず、やってみようかな?」という感触でした。
もともとお酒も好きだったということもありますし、そこから色々勉強を始めました。最初の段階では、まだ、できるかできないかっていうのは、わかっていなかったですね。
そこから、銀座の八蛮というブルワリーで一年半くらい働き、その後、ブルワリーを立ち上げたいという社長さんと繋がり、その立ち上げの手伝いをすることになっていたのですが、その人とは、あまり馬が合いませんでした。
そのことを父に話したら「うちに場所が余っているからそこでビール工場をやればいいじゃないか」という話になったんです。父は、町工場の金型屋を経営していて、その工場の余った敷地を使えば良いと。
いずれは、自分でブルワリーを持つことを決めていました。未経験だったので、ブルワリーの立ち上げを経験できるのはチャンスだと思っていたのですが、そんなこともあり、思っていたより早い段階で、自分のところでブルワリーを持つことになりました。
星野製作所(麦)という名称について
「なんとかビール」みたいな名前をつけたくなかったんですね。
例えば、ビールのタップが並んだ中に「なんとかブルワリー」「なんとかビール」という名前が並んでいる中で「星野製作所(麦)」という名前があったら、ちょっと面白いだろうなって思ったんですよね。なんというか、町工場の手触りというか響きみたいなものが感じられるような気がして。
ボトルデザインも、多分そういった考えが根底にあって、違和感って大事だと思っているんですよ。他のビールボトルが並んだ中に、このデザインのような違和感があるビールボトルがあるのが、面白いんじゃないかな?って。
SNSでは自分のキャラクターを敢えて出している
SNSをきっかけに、北海道や鹿児島のお店などからも取引があったりするんですよ。なので、SNSの発信も重要だと思っています。
基本的に自分一人でやっているので「星野製作所(麦)」と言ったら、自分の顔が浮かぶような感じなのかな?と思っています。SNSでは、なるべく素直に自分が思ったことを出していますし、いわゆるテンプレート的な画像や言葉は使わないようにしていますね。
好きな小説や音楽など、ビール以外の話題も出したりしています。そういうところでも、差別化につながるんじゃないかな?と思っていますし、それを面白がってくれている人もいるようなので。
例えば、ビールというものをSNSで見るとき、うちのビールでも、よそのビールでも、見た目ではそんなに変わらないんですよ。なので付属する言葉であったり、ビールのネーミングであったり、自分のキャラクターが反映されたものであれば、一見、同じように見えるビールが、ちょっと違うように見えてきたりするんじゃないかな?って気がするんですよね。
クラフトビールの魅力は多様性だと思う
昔と比べて、今の方がクラフトビールの数自体は増えているんですが、飲まれている種類は、もしかしたら減っているかもしれないって思っています。今は、ホップをたくさん使ったIPAなど一部の種類のビールしか作られていないのが現状です。最近クラフトビールを飲み始めた人にとってはクラフトビール=IPAなんじゃないかって思っている人もいるんじゃないかと。
自分は、クラフトビールの魅力というのは、多様性だと思っているんですよね。なので、それってクラフトビールの魅力を半減させてしまっているんじゃないかと感じています。
クラフトビールの種類って、一説によると300種類くらいあると言われているんです。さらに新しいビールのスタイルもどんどん出てきているので、自分としては、色々なビールの種類があるということを知ってもらうために、今は主にIPA以外の種類のビールを作っています。
自分が狙った味に近いものができることに拘っている
ビールの味としての美味しさっていうのは、好みがあったりすると思うので、色々な評価の仕方があると思うのですが、それより大切だと思っていることは、作る本人が作りたいものがあって、できたビールがその作りたかったものに近いものかどうか?なんじゃないかと。
だから、近づけるためにはどうしたらいいのか?っていうことをずっと考えています。
なぜこんなことを言うのかといえば、世の中には、なんとなくクラフトビールを作っている人がいるように思っているんです。それは、ビールガイドラインや、そのビールの説明文と、できているものに差があると感じたことがあるからです。
自分としては「自分の作りたいもの」があって、それに近づけるようなモノ作りをしていきたいなと思っています。
昔より今の方がチャレンジできるような気がする
今後は、自分のビールをいつでも飲んでもらえるような店舗を近くに構えたいとは思っています。お店を作るのが先なのか、仕込みのサイズを大きくするのが先なのかは、まだ決めていないのですが。
よく「昔は怖いもの知らずだった」っていう人がいたりするんですけど、僕、逆なんですよ。
今の方があんまり怖いものがないんです。例えば失敗しても「どうせそんな大したことない」くらいの気持ちでいます。
以前は、失敗しちゃいけないって思っていたんですよ。でも実際に失敗しても、そんなに大したことなかったなっていうことってあるじゃないですか。そんなことが何度かあって、仮に、失敗したとしても怖くないなって思うようになりました。
だから、歳を取ったからチャレンジできないということは、全くなくて、むしろ昔の方がチャレンジができない感じだったと思います。
自分のやりたいことに誠実な星野さん。情熱で突っ走るというよりも、一つ一つのことに的確な目的意識を持って、進めようとしている印象でした。ものを作るだけでなく、ものを売ることにもこだわりを持つようなスタイルは、なかなかできる人は少ないとは思うものの、そんなものづくりをする人たちが、草加に増えてきたら面白いなと感じました。
「星野製作所(麦)」近隣のお取り扱い店
撮影場所
ecoma coffee 〒340-0014 埼玉県草加市住吉1丁目13−2
野菜とお酒のバル スバル 〒340-0014 埼玉県草加市住吉1丁目3−26
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